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無慈悲な迷宮探索の果てに -『ノームの終わりなき洞窟』

なろう備忘録第45弾。

あらすじ:
 地の精霊が作ったと噂される世界屈指の巨大洞窟、ノームズ・エンドレス・ダンジョン。その最奥を見た者は未だおらず、今なお洞窟は複雑に延び続けている。命知らずの冒険者が最後に挑むラストダンジョンとしても有名なこの洞窟。実情はたった一人の錬金術士と意地汚い精霊によって、やむにやまれぬ理由から作られていた。

 
 そして少女は宝石の丘を発った。
 いつ来るとも知れない人を想って。
 待つのではなく、向かっていった。
 精霊達と共に、自らの足で帰還の道を辿り始める。
-----【ラストダンジョン:宝石の丘】『闇色乙女』

 



1年前くらいからブクマの奥の方に眠っていたこの作品。ご都合ハッピーエンドに少々食傷気味だったので【悲劇】のタグに惹かれて読んでみようと思い立つ。最後まで読んでみた所感としては、ただ胸糞悪いバッドエンドではなく、若干の救いが残ったメリーバッドエンドという感じでした。メリバのなんともいえない読後感が好きなんですよね。

作者さん曰くこの作品は『ノームの終わりなき道程』の前日譚とのこと。Fate/Zeroみたいなものですね。『終わりなき洞窟』で様々なモノを失った主人公が、『終わりなき道程』で幸の光を探す旅に出る、という流れ。因みに道程の方は現在連載中。

さてさて、では悲劇『ノームの終わりなき洞窟』の魅力について書いていこうと思います。

まずこの作品はとにかく、世界観の広げ方が上手い。つまりはストーリーの構成が本当に上手いんですよ。定期的に新しい要素が追加されていくので、飽きることなく読み進めることができる。中弛みが全く無いのだ。それでいてメインキャラは最後まで3人で固定しているのがまた良い。仲間の数は3~6人くらいが好きです。

1章~16章は、とにかく地中を掘っていく。スライムやノームを使役しつつ、宝石を求めて、奥底へ、深淵へ、どこまでもどこまでも進んでいく。洞窟内の生態系や、スライムの突然変異などの設定が独特の世界観を築いていて面白かった。

そして主人公たちが穴を掘っていった後に出来た洞窟に住み着いた魔物、掘り残した宝石などに釣られて冒険者が集まってきて、その洞窟はダンジョンと化していく…。

とまあこんな感じのお話なんですけども、この話は17章からが本番。16章までに積み上げてきたものが昇華されていく感じが本当に最高でした。特に最終章は本当に良かった。苦味や、虚しさの描き方がぐっときた。詳しく書いてしまうと思いっきりネタバレになるのが辛い。ただこれだけはどうしても伝えておきたいのですが、最終章の空っぽになってしまった主人公の描写、ビーチェの最後の決意のシーンは本当に良いです。是非、読んでみてほしい一作。

 ノームの終わりなき洞穴

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