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【小説家になろう】面白そうな作品メモ まとめ [56作品]

8/30:他記事で紹介済みの作品を削除。並びに新たな作品を追加。

こんばんは。
なろうの積読が結構な量になってきたので公開しようと思います。

殆ど未読なので簡易的な紹介になりますが、何らかの参考になれば幸いです。
そしてコメント欄でオススメ作品を紹介してくれた皆様方に感謝を。

 

完結済

  タイトル 文字数
1 平和の守護者 3,254,383
現代ファンタジー。能力バトルもの。空を飛びたいと願う少年の成長譚。レビュー数が多い作品は傑作の法則。
2 灰と王国 974,546
なろう要素なしの本格的ファンタジー。割とダーク寄りっぽい。
3 ノームの終わりなき洞穴 754,523
錬金術師と精霊がダンジョン運営。硬派な感じ。
4 魔法少女を助けたい 540,884
現代社会が舞台の魔法少女モノ。主人公は普通の大学生。
5 バグ技と安定チャートでいく、フリーシナリオ異世界攻略! 751,455
さらっと読んでみた感じ割と良質なハーレムもの。攻略本片手にゲームの世界に入ったようなものなので、全てが主人公の思いのままになってて「ん?」ってなるかも。
6 本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 5,682,766
絶対面白いのは分かってるんだけど、如何せん文字数が多くて中々読み始める気にならない作品。長期休暇中にでもじっくり読みたいやつです。
7 破戒眼のユーリ ~最強師弟の不思議な関係~ 463,453
TS少女と師匠のほのぼのライフ。年の差カップル。
8 カルマの塔 1,728,270
復讐モノが軸の架空戦記。これはおそらく読み始めたら止まらないヤツ。
9 没落貴族令嬢の異国間結婚奮闘実録 300,620
異文化間の恋愛コメディ。 ほのぼの系っぽい。
10  投擲士と探検技工士は洞窟を潜る 386,373
傭兵+技工士+エルフの少女。目指すは洞窟の最奥。
11 勇者様のお師匠様 963,814
落ちこぼれ主人公がお師匠様でヒロインが勇者様。ボーイミーツガール。
12 マタギの孫をなめんなよ! ~魔獣を狩る者たち~ 781,102
未開の部族に転生。閉鎖的な場所から始まる系の話は世界観が拡張していく過程が好き。
13 空中散歩 342,392
ミステリ風味な現代恋愛モノ。女主人公。唯一の家族だった兄が失踪。半年後、彼女の元に兄の友人を名乗る人物が現れた。この作者さんの恋愛モノほんと良いです。
14 転送先は死刑台 491,995
「ちょっと待て、死刑執行まであと3秒?! 俺に一体どうしろと?!」
15 辺境の老騎士 1,116,233
長期休暇中にでもじっくり読みたいやつ筆頭。年老いた騎士の気ままな一人旅。
16 使えない祝福とぼっちな俺 150,900
「菌」というサブテーマに惹かれた。ぼっちで異世界サバイバル。
17 私は戦うダンジョンマスター 646,629
最狂女子校生がダンジョン運営。侵略してくる異世界人を慈悲も容赦もなく殺し切る。
18 冒険者になったことは正解なのか? 449,249
青春 / 冒険 / ファンタジー
19 IMMORTAL BLOOD 1,179,468
異世界転移 / 異能力バトル
20 サムヒア・ノーヒア 94,681
現代 / 青春
21 依存的彼女 266,908
現代 / 恋愛
22 静かの海 283,107
年の差 / 悲恋 / 青春
23 中間管理職のおっさん、一万八千年後の未来へ。 221,251 
ローファンタジー / ディストピア
24 異世界で魔王になる方法 332,583
登場人物が酷い目に合う / 成長 / ダークファンタジー
25 ノーリグレット! 1,820,519 
異世界転生 / ロック
26 やり直してもサッカー小僧 968,134 
スポーツ / 現代 / 成長 
27 「「神と呼ばれ、魔王と呼ばれても」」 272,664
未来SF / 超越者 / シムワールド 
28 麗人賢者の薬草箱 602,176
調合 / 錬金術 / 恋愛
29 神様の定食屋 241,682 
現代 / ほっこり(自称)/ 料理 
30 無欲の聖女(旧題:無欲の聖女は金にときめく) 918,912 
 TS / 悪役令嬢 / 入れ替わり
31 英雄《しゅやく》になれない槍使い 514,525 
オリジナル戦記 / 青春 / ヒーロー 
32    
 
33    
 
34    
 

 


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連載中

 
1 ンディアナガル殲記 1,406,412
『残酷博覧会』のタグに惹かれる。完結待ち。
2 オークの騎士 820,773
もし武人がオークに転生したら。ロリヒロインと筋骨隆々なオークの絵面。
3 賢者の弟子を名乗る賢者 1,451,105
VRMMOの世界をロリババアが闊歩するはなし。
4 リビティウム皇国のブタクサ姫 1,152,132
TSして少女に転生。勘違い系のほのぼのコメディ。これも完結待ちかなあ。
5 ライブダンジョン! 1,000,659
新星気鋭。ゲーム内転生。不遇のヒーラー職。かなり面白そうだけど、完結を座して待つ。
6 戦乱の帝国と、我が謀略 ~史上最強の国が出来るまで~ 823,909
『目立ちたがりの主人公や、俺TUEEEEを読むのが辛くなってきた人向け』の煽り文句が良いです。三国志を元にした戦記モノ。
7 剣士を目指して入学したのに魔法適性9999なんですけど!? 342,882
キャラが元気!可愛い!百合!最高!
8 俺の現実は恋愛ゲーム?? ~かと思ったら命がけのゲームだった~ 363,777
予想できない展開、まさかのどんでん返し。 なろうでは割と珍しいサスペンスもの。
9 望まぬ不死の冒険者 1,083,862
転生無し、チート無しのファンタジー。堅実に面白い王道異世界モノって感じ。
10 俺んちに来た女騎士と田舎暮らしすることになった件 513,671
 ほのぼの日常モノ。魔法×農業×恋愛っていったいどんなことになってしまうんだ。
11 影の使い手 315,602
クラス転移もの。『目立ちたくない』を信条とする脇役系主人公が暗躍する感じだろうか。
12 覇王の走狗(いぬ) 2,452,307
古代中華風の架空戦記。 テキスト量が膨大な感じ良い。
13 ななしのワーズワード 946,203
世界最悪のサイバーテロリスト『ワーズワード』が異世界に飛ばされたら。
14 美少女になったけど、ネトゲ廃人やってます。 853,752
タイトルそのまんま。銀髪美少女がVRMMOで錬金術を極める……絶対面白いやつだ。
15 転生ごときで逃げられるとでも、兄さん? 731,312
異世界転生 / サスペンス
16 盤上のピーセス 452,580
精霊 /  ボードゲーム風異世界
17 <Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 1,910,880
異能力バトル / VRMMO
18 前世で不幸だった俺が異世界でも不幸な人生を歩みつつチートで不老不死を目指す(旧題:ここではありふれた物語) 2,067,953
異世界転生 / 成り上がり
19 異世界くじと神々の塔 801,327
ガチ百合 / ダンジョン
20 俺の彼女が120円だった件 386,277 
日常 / ラブコメ
21 呪印の女剣士 4,375,601 
オリジナル戦記 / ダークファンタジー
22 オタな俺とオタク少女 921,636 
恋愛 / ハーレム
23 ポンコツ勇者と聖母騎士団 367,204
ブコメ / ハーレム
24 四度目は嫌な死属性魔術師 2,791,517 
成り上がり / 異世界転移
25 ツクモ白蓮 643,501 
日常 / 恋愛 / 現代和風ファンタジー
26    
 
27    
 
28    
 
29    
 
30    
 
31    
 


随時更新。

 

守るべきもの -『刃金の翼』

なろう備忘録第34弾。

あらすじ: 
五色の神と四大国によって繁栄するパルセルト大陸。数年ぶりの魔物の侵攻が噂される最中、冒険者を養成するルベリア学園で仲間を探す少年少女は風変わりな男に出会う。サムライを名乗る男は英雄たりえる力を持ちながら、魔力を失い落ちぶれたという。数奇な出会いは風を呼び、ここに大陸を揺るがす戦いの宿命が始まる。


前回に続いて、今回紹介するのも王道ファンタジー長編。転生無しの異世界ファンタジーではあるが、能力やらヒロインがやたら多かったりと、割となろう要素は多め。ただストーリーになろう系のテンプレ要素はほぼ皆無。しっかりした骨組みを持つ正当派なストーリーです。

ただ、個人的に若干引っかかったのがキャラクター。この作品は主人公が2人いる。様々なモノを犠牲に強さを得た侍:カイと、全てを守らんとする騎士:クルスだ。

クルスの方は良かった。彼の理念には共感できるし、守るべきもののために努力する、完璧な主人公だった。しかし一方でカイのほうにはあまり感情移入が出来なかった。壮絶な過去を持ち、人生に達観していて、まるで人間らしくない彼の考えは全く理解できないという程ではないが、あまり共感できるものではなかった。それに準じて、カイに惹かれていく二人のメインヒロイン達の姿も、なんとなく一歩引いたところから読んでしまった。

そんなこともあってかあまりキャラクターに感情移入は出来なかったけれども、ストーリーは文句無しに面白かったので最後まで楽しく読めた。外伝の『XX話:最後の神話』を読み終わった瞬間は、確かな充足感にしばし放心してしまった。良い作品でした。




以下個人的感想。ネタバレ注意。

ギルドではムードメーカー的な立ち位置にいるイリスだが、本人はそれを役割として認識している。
---1章7話「共闘以来」

普段は明るく振る舞ってるけど、実際は……みたいな二面性を持ってるキャラクターが大好きなので最初はイリスがすごく好きだった。彼女はクルスとくっつくといいいなあなんて思いながら読んでいたので、彼女がカイに惹かれていく過程はちょっとモヤモヤしてしまったり。

隣で甲斐甲斐しく衣服を畳んでいたシオンが顔を挙げて首を傾げるが、何でもないとばかりに頭を撫でる。
(中略)
笑い合う二人の姿は親娘にも兄妹にも、あるいは恋人にもみえる。ただ暖かく、微笑ましい。
---3章14話「夏のはじまり」

クルスとシオンのペアが本当に好きだった。なんというかこの二人が作品唯一の癒しでした。二人でのんびり釣りをするシーンも良かったし、ドワーフの子供たちにもみくちゃにされる二人もめちゃ萌えでした。願わくば彼らの行く末をもっともっと読みたいものです。外伝更新されないかなあ…。

 

 刃金の翼
【一覧】なろう備忘録 - [ 発信所 ]

 

そして少年は少女の騎士となる -『Rotted-S』

なろう備忘録第33弾。

あらすじ:
人には見えないものが見える異能を持った少年アージェは、ある晩村で起きた事件を切っ掛けに、忌まわしい思い出が残る森へと踏み入ることになる。そこから始まる彼自身の変遷は、一人の美しい少女と、また大陸に残る神話と、深く繋がっていた。主人公の少年期から青年期までを描く成長記。そして大陸を彩る戦乱と、神代の清算を記す物語。

 
なろうでは珍しい、転生無しの純正ファンタジー作品。卓越した文章力、作りこまれた舞台設定など、海外のジュブナイル小説を読んでいるような気持ちになった。

なろう系テンプレな享楽的な作品に耽るのも良いですが、時折こういう純粋で王道な長編ファンタジー作品をがっつり読みたくなる時があるんですよね。『ハリー・ポッター』『ダレン・シャン』『はてしない物語』などをワクワクしながら読んでいたあの頃の感覚を無意識に求めているのかもしれない。

その点この『Rotted-S』は本当に素晴らしかった。一人の少女のために騎士になる少年。半人前な少年が様々な経験を通して世界を知り、時には大人に諭されながらも、一歩ずつ成長していく過程。徐々に明らかにされていく神話時代の歪。私がずっと「こういう王道ファンタジー作品が読みたい」と思ってきた理想の作品が、ここにあった。

今回も色々となんやかんや雑記していこうと思います。※ネタバレ注意。


◆ 1. アージェ+レア

少年期のアージェについては、壮絶な過去によりある程度達観してはいるものの、やはり行動や言動にどこか幼さが感じられてあまり感情移入は出来なかった。小説を読むときは物語に没入して主人公の視点で追体験してしまいがちな人間なので、少年期の彼には割とモヤモヤさせられました。ただ嫌悪感みたいなのは無かった。等身大で良い主人公だと思います。

で、そのモヤモヤが顕著に現われたのが、彼が「俺はレアリアの騎士にはならない」と頑なにこだわり続けたところ。過去の経験から忌避感があるのは理解できたけど、でもやはりどこかピースが合わないような違和感は拭えなかった。

まるで並行する線の上を共に歩いていたような数ヶ月間。微温湯のような時は、彼女の目的が「騎士を探すこと」にあったのだと気づいた時に終わった。アージェは、自分が彼女にとって純粋な意味で友人ではなかったことを知ったのだ。
---Act3『石鏡 004』 


このへんは本当にもどかしかった。レアリアの本当の内心を知っている分、特に。なんでそうなっちゃうんだ…と半ば諦めながら嘆いた。でもこういうすれ違いや勘違いは物語において(ジュブナイルなら特に)必要なものだとも改めて思う。この辺のストーリーは特に強く惹きこまれて、時間を忘れて読み耽ってしまった。

なんというか上手く言葉にできないんですが、こういう読者にモヤモヤした感情(若干のストレス)を与えるのは結構重要なことだと思うんです。最近のなろう小説は何かと読者にストレスを与えると思われるものを排除しがちだけど、そういう小説はどこか物足りなくて刺激に乏しい気がする。しかしまあ難しいことだとも思います。

恋愛要素を例に挙げてみると、メインヒロインと主人公を容易にくっつけないようにするとか。やはりじれったいモヤモヤは感じるのですが、満足を求めて続きを読みたいと思い、それは読者を作品に惹きつける一要素となる訳で。というか数年前のライトノベルは殆んどこんな感じだったような気がします。いつの間にやら界隈はチョロインだらけになってしまいましたが。

閑話休題

物語は進み、主人公はレアリアの過去を知り、彼女がおかれている状況、彼女が実際にどういう扱いを受けているのかを知って、自分の思いに葛藤して気持ちが揺らぎ始める訳ですが、しかし過去の苦い思い出から「騎士」という存在に嫌悪感を抱く彼は結論を出せずにいた。

ここでの主人公に対するエヴェンの言葉が刺さるのだ。

「そうかもな。俺のこれは、多分甘えだ。俺は恵まれて育ってるからな。ただな、お前のそれも甘えなんだよ。一を見て十が嫌だと駄々をこねてる。自分は違うものになろうと何故思わない? 少なくとも、陛下が今、窮屈な思いをなさってるのはお前が甘えたガキでいるせいだ」
---Act3『二と一 001』

私の言いたいことをそのまま代弁してくれたように感じる。こういう風に主人公の背中を押してくれるキャラクターがいる作品が好きです。 

そして主人公は少女の本心を知り、彼女の騎士となるのですが不遇期間が長かったのもありその感動はひとしおだった。ストーリーの6割を費やして、満を持してのこの展開。やっと綺麗にピースがはまったような気持ち良い爽快感を味わいました。ここでのレアリアの反応がまた良くて。

レアリアはただ今だけは、声を上げて泣きたいと思った。
---Act3『二と一 004』

この泣きたくてたまらないのに我慢してそれに耐えるところに、彼女の女皇としての強さが垣間見えて、とても良かった。ここのアージェとレアリアの問答はもう何回も読み直した。不遇っ子が報われるシーンは良いものです。

その後の2人の関係性がまた素晴らしい。女皇と騎士という、対等な立場というと語弊があるかもしれませんが、守る守られるの一方的な擁護ではなく、共に助け合い支え合う関係性といいますか。その間にあるのが恋愛感情じゃなくて親愛感情なのも良い。

またそれがポーズだとしても、ヒロインに仕える主人公という構図が思ったより良かった。なんというかアージェがレアに敬語で話すのが、これまでのギャップも相まってめちゃくちゃ萌え転げた。至る所で主人を大切にしている想いが見られて、この辺りからの主人公はもう本当に格好良くてとても好きです。

本編はシリアス一辺倒でしたが、幕間や後日談の彼らの甘々なバカップルな感じもとても癒された。レアリアが他の男に頭を撫でられているところを見て、思いっきり嫉妬しているアージェがなんというか人間らしくて微笑ましかった。

そして後日談最後のエピソードである『幸 (100題4・1996年)』が本当に、素晴らしかった。死期を悟ったレアリアがアージェと共に歩んできた人生を顧みて、彼に感謝を告げる場面。涙が止まらなかった。彼らの軌跡を思い、自分でも引くくらいに泣いてしまった。「ああ、自分はこんなにも彼らのことが好きだったのだな」と改めて実感したように思う。本当に良かった。


◆ 2. ミルザ

「兄はディアドだ。もし迷ったらそれを思い出せ。ディアドは他の騎士とは違う。ただ一人の為の戦士だ。―――― 他を捨てようともその御手だけを掴めればいい
---Act5『天高く謳う 002』


何気に彼女が作中で一番好きなキャラクターかもしれない。初登場時はなんだか元気な子だなあくらいの印象しか抱かなかったのですが、アージェが騎士になった後の「兄!」と何かと世話を焼こうとする彼女がかわいくて(この呼び方とても好き)、だんだんと好きになっていった。態度のでかさの割に小柄で華奢なのも萌えます。

だからこそあの最期はかなり胸に来た。薄々彼女は退場する側の人間なんだろうなとは思っていましたが、それでもやはり辛かった。

欲しいと切望した時間が得られた。
それは彼女が想起した後悔を拭う為の時間で、けれど無事、目的を果たすことが出来た。兄を助け、優しくしたかったのだ。それは他者から見れば大して変化のないことなのだろうが、彼女にとっては精一杯だった。
---Act5『天高く謳う 002』

今際の際に彼女が零したこの独白が、もう本当に切なくて、心に刺さる。最後に交わした兄との会話が、彼女にとって少しでも救いになっていたことを望みます。




以上、個人的感想垂れ流しでした。
改めて、本当に良い作品でした。掛け値無しに、なろうファンタジーの中でも最高峰の作品だと思います。

ああ、この作品に出会えて良かった。

 Rotted-S
【一覧】なろう備忘録 - [ 発信所 ]

 

海外のベストレビューを翻訳する -『中二病でも恋がしたい!』

今回は意訳多めです。
各アニメの海外で最も支持されているレビューを翻訳する。

原文はコチラ。(MyAnimeListより)


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Dec 28, 2012
12 of 12 episodes seen
Overall Rating: 7
821 people found this review helpful

成長するということは簡単なことでは無く、その過程を振り返るたびに恥ずかしくなったり後悔したりすることは常である。真に『大人になる』ということを示すのはなんだろう。独立して生きていける能力、あるいは社会規範への順応であろうか。子供のような好奇心を持ち続けている人は、成長していないのだろうか。おそらくそれは間違っているが、まあ何とも言えないことである。

日本のインターネット文化では奇妙な言葉が使われている。"中二病" すなわち "Eighth Grade Syndrome" という言葉は、傍から見ると不自然なキャラクターを演じる人物を指す*1。子供の頃に魅力的なTVキャラクターを見つけたとき、彼らのようになりきって遊んだ覚えが無いだろうか。

"中二病" は10代の学生がそれを行うことで、しかしその影響は架空の人格がライフスタイル全体を定義してしまう程である。公共の場でそのような行動をすることは恥ずかしいことであるが、また素面に戻ったときにその行動を思い返すことはさらに恥ずかしい。

ああ、哀れなり Yuuta。

「ダーク・フレイム・マスター」として過ごした中学時代を深く後悔した彼は、心機一転して高校生活を普通の学生として過ごすことに決めた。彼は完全に過去を断ち切るために中学時代の同級生がいない高校に入学した。その計画は成功すると思われた……奇抜な服装をした美しい少女が彼のベランダに現れるまでは。

f:id:owlhoot:20170525011555j:plain


Takanashi RIkka という名の少女は現在進行形の中二病だった。そして悪いことに、彼女は最近同じアパートに越してきていて、ベランダで Yuuta が「ダーク・フレイム・マスター」として振る舞っているところを目撃されていた。そう簡単に過去から脱却できるはずがなかった。

結果的に、彼は不本意ながら Rikka の興味を惹いてしまい、新しい高校で普通に過ごすための彼の計画は、毎日のようにちょっかいをかけてくる Rikka の存在によって頓挫せざるをえなくなった。しかし彼はどっちみち中二病を忘れることは出来なかった。なぜならば、彼らが出会うことは、Rikka の「Wicked Eye」によって示されていた運命であったからだ。……おそらく、多分。

『Chuunibyou demo Koi ga Shitai』、略して『Chuu2-Byo』。このタイトルが彼ら二人の関係を強調していることは明らかである。Yuuta と Rikka の2人がこの作品の柱であり、彼らの交流は見ていてとても楽しく、愛らしい。Yuuta と遊びたいがために色々とちょっかいをかける Rikka であったり、気分が落ち込んだ Rikka を励ますために封印していたはずの「ダーク・フレイム・マスター」の仮面を取り出す Yuuta であったり。

魅力的なキャラクター達が幼少時代を連想させる馬鹿げた行動をするのを見るのは、時に懐かしさを感るが、やはり些か恥ずかしい気持ちになる。しかしそれらを可愛らしいキャラクターに演じさせることで上手いこと昇華させている。見事な設定だと思う。『Chuu2-Byo』は可愛さという要素においては完璧で、全く隙が無いと言ってよい。

それぞれ明確な役割を持っているサブキャラクター達もこの作品の魅力を底上げしている。Rikka に忠誠を尽くす中等部の現役中二病な少女 Sanae Dekomori、睡眠をなによりも愛する先輩 Kumin、主人公の男友達の Isshiki。

そしてその中でも最も重要なキャラクターが Nibutani Shinka だ。当初は作中で唯一の常識人だとされていた彼女であるが、実のところ中学時代の彼女はドがつくほどの中二病であった。Yuuta はその事実を知ってしまうのだが、その後の親切さを投げ捨てて何が何でも口止めさせようとする必死な彼女が面白い。

しかし Rikka が Yuuta への気持ちを自覚するようになると、Nibutani の世話焼きで慈悲深い性格の一面が現れてくる。じれじれな関係の二人の背中を押したり、ある時は忌まわしき中二病時代のペルソナを用いてまで、彼らの恋路を応援する。

作品の見た目による第一印象がミスリードを誘ってしまうのはよくあることであり、この作品はその典型例と言える。中二病な少女たちの織り成す日常劇に思われがちなこの作品の実態は、れっきとしたラブストーリーであるのだ。前半のエピソードこそコメディが多めであるが、後半に差し掛かると Rikka の Yuuta への想いに焦点が当てられていく。Rikka にとって"愛情"は全く慣れ親しんでいない感情であり、その混乱のさなか、少女としての人格と中二病としての人格がせめぎあい、彼女は何とかして中二病側の人格を用いて照れや恥ずかしさを隠そうとする。

この自らの内にある愛情を認識して、その感情が積もりに積もっていく過程が、他の何よりも魅力的であった。

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しかし彼らの間に起こるロマンスは些か拍子抜けであり、思わず感動してしまうようなドラマはなかった。ここにこの作品の欠点がある。『とらドラ』や『あの花』にあるような、恋愛モノになければならない、作品を盛り上げるドラマが足りなかった。アニメ作品で過度なドラマを描こうとするのがそもそも間違っているのだろうか?いや、そんなことはないはずだ。

しかし、この作品には後半の恋愛ストーリーで本格的なドラマを描けない理由があった。その原因はシリーズ前半をコメディ多めで描いてしまったことにある。突然シリアスなドラマが始まり、雰囲気を全く別のものにしてしまったら、当然視聴者は困惑してしまう。この方向転換が非常に困難だったため、後半の恋愛ストーリーがやや物足りなく中途半端なモノになってしまった。

これは出口の見えない問題である。ドラマのクオリティを犠牲にすることで、たしかにYuuta と Rikka の恋物語は自然に見ることができたし、コメディ調から恋愛系にシフトしていく過程も殆ど違和感は無かった。ドラマチックな瞬間もいくらか描かれている。しかしそうなってくると少しくらいは後半にもコメディ要素を入れても良かったかもしれない。アニメ前半の明快なキャラクター達のやりとりはとても面白かったので、後半そのようなやりとりが見れないのはやや残念だった。

さて、この作品の魅力をもう1つ挙げておこう。それは、京アニの豪華な作画クオリティがキャラクターの感情表現をより良いものにしていることだ。可愛いデザインのキャラクターを最高峰のアニメーション技術で描いている。特にファンタジー空間における戦闘アニメーションのレベルは驚くべきものである。因みに私のお気に入り作画ポイントは、Yuuta と Rikka が橋の下で静かに寄り添う背景で、街の光、川面にちらつく明かりが灯っているシーンだ。

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『Chuu2-Byo』が良い作品であることは確かであり、おそらく貴方は私より後半のラブロマンスを楽しめるだろうし、途中で作品の雰囲気が変わることもあまり気にならないだろうと思う。

しかし、私がこの作品を本当に心温まる話に、非常に楽しいエピソード、過去数年間の中でも最高にロマンチックなカップルがいる完璧な傑作だと評するとなると、おそらく貴方は首を傾げてしまうことだろう。



おまけ:海外の「中二病」を題材にしたMAD作品


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海外のベストレビューを翻訳する 【記事一覧】

海外のベストレビューを翻訳する -『狼と香辛料』

海外のベストレビューを翻訳する -『Re:ゼロから始める異世界生活』(批判多め注意)


*1:このへんの翻訳はちょっと怪しいです

タイトル詐欺とはかくあるべし -『ちん☆みこ ~私はちんこに仕える巫女になりました~』

なろう備忘録第32弾。

あらすじ:
ある日、大学生の『私』のちんこが『神』になっていた。そしてちんこを失った私の体は神の恩情によって、私が理想とする黒髪の乙女へと変えられていた。
だがしかし、私は私のちんこで嬉し恥ずかしのエッチなことをしたい!! 
私は私のちんこと合体を果たし、再び男の姿を取り戻すため、ちんこの下で巫女として修業することになる。これはそんな黒髪の乙女となった童貞をこじらせた『私』と紳士的な『神』との物語である。

 
ラノベ界隈では長々とした説明調なタイトルでどうにかして読者の気を惹こうとする作品が増えてきている昨今ですが、ついにここまで来たかという感じです。

『表紙で本の価値を判断してはならない』なんて英語のことわざがありますが、それにしてもこのタイトルは凄い。実際に中身を読んでみたら分かるんですが、割と作品の雰囲気を如実に表したタイトルで、なんというか一本とられた感があった。

内容は『コメディ×TSモノ』って感じです。阿呆な大学生達を、格式高い文章で描いている。その文体や舞台設定などから森見登美彦氏を彷彿とさせられたが、どうやら実際に氏をリスペクトしているらしい。『四畳半神話大系』とか『夜は短し』とほぼ同じ雰囲気なので、それらの作品のファンの方は絶対楽しめると思う。

最初はコメディ調だったこともあってTS要素は軽めなのかな、なんて思ってましたが、後半は性転換による心情の変化や葛藤などが丁寧に描かれていて良かったです。作中では魑魅魍魎とまで称されているサブキャラクター達も皆個性豊かでとても魅力的だった。

とりあえず騙されたと思って1話だけでも読んでみてほしい。
あ、タイトルはアレですが中身はとても健全な物語なのでご安心を。

 ちん☆みこ ~私はちんこに仕える巫女になりました~

【一覧】なろう備忘録 - [ 発信所 ]

 

第一級のエンターテイメント -『明治蒸気幻想パンク・ノスタルヂア』

なろう備忘録第31弾。

あらすじ:
【業務内容】護衛、あるいは殺人。【週休】不定期、あるいは無し。【月額報酬】平均十三円。 ――明治中期、国内最悪の治安を誇る島に住まう主人公・井澄は、異能の術師や傍流の剣士がはばを利かせる中で争いを仕事場に生きている。そして暇さえあれば職場の上司たる少女・八千草に求愛し、すげなく流され、けれどめげずに生きている。……偽史の明治を舞台とした、色恋と刃傷と狂気の沙汰。


ファンタジーやらスチームパンクやら色々混ざった架空の明治を舞台にした群像劇、或いは骨太ヒューマンドラマ。回り回って加速し続ける物語に目を離せない。

もうとにかく、滅茶苦茶面白かった!!

久々に『ストーリー』に魅せられる物語に出会った気がする。ちゃんと終わりを見据えて上手いこと話が組み立てられていると感じた。約80万文字に一切の無駄がありません。わりと群像劇っぽい感じなので、思わぬところからストーリーが繋がってくるのがまた面白い。物語の大体は血生臭い派閥争いなのですが、時たま入る日常話が良い感じに緩和剤になっていたと思う。

全体の雰囲気はアニメ『サムライチャンプルー』に近いかなーなんて思ったり。

そしてまあ、登場人物が本当に皆良いキャラをしている。

ヒロインは煙草を燻らすクールなボクっ子ロリ上司。主人公はそんな彼女に首ったけ。物語の中で彼らの関係は二転三転していく。彼らの過去が明らかになるところからが本番だろうか。この物語の1つの軸は彼らの純愛ストーリーと言って過言では無い。そして、主人公を意識し始める辺りのヒロインの可愛さはとにかく途轍もないです。何度「あ~~~~~」と悶え爆発したか分からない。

また主人公の仲間に三船靖周・三船小雪路という兄妹がいるのですが、彼らも素晴らしいキャラクターでした。近すぎる故に、互いを想い合う故にすれ違ってしまったり、兄弟愛を越える愛を抱いてしまったりと色々不安定で危うい感じが個人的にGOODでした。なんというか心理描写がほんとに克明で、彼らにはかなり感情移入してしまった。互いを想い合い支え合う関係性が本当に素敵だった。そしてお兄ちゃんっ子全開な小雪路は最高に可愛い。



可愛い可愛いと話が逸れがちになりますが(性分なんです、ごめんなさい)、この作品の核は登場人物の「台詞」あるいは「言葉」にあると私は思いました。時折ハッとさせられる台詞があったり、胸に染みるような言葉があったりする。

また文章はとても巧い。作品の雰囲気に合わせたエキゾチックな文体や、言葉遊びを交えたルビ振りなど、読んでいて楽しかった。正直一般小説レベル、いやそれ以上のクオリティを誇っていると思う程でした。

こういう傑作がたまに埋もれているからなろうを読むのは止められない。

 明治蒸気幻想パンク・ノスタルヂア

【一覧】なろう備忘録 - [ 発信所 ]

 

海外のベストレビューを翻訳する -『狼と香辛料』

5/16:誤訳修正しました。
各アニメの海外で最も支持されているレビューを翻訳する。

原文はコチラ。(MyAnimeListより)


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Dec 5, 2014
13 of 13 episodes seen
Overall Rating: 10
167 people found this review helpful

このレビューは1期2期まとめてのレビューであるが、極力ネタバレは含まないように書いた。

この作品をレビューすることにおいての主題は「never judge a book by its cover <見かけで中身を判断しないことだ>」であると私は思う。主人公の頬に平手打ちで”FANSERVICE stamp*1"を残しそうな裸のオオカミ少女が登場するにも関わらず、そのストーリーはあらゆる作品の中でもかなりユニークである。正直『狼と香辛料』という作品は説明するのが難しい。舞台設定は中世ファンタジーだが、剣や魔法は無く、その代わりに描かれるのは商売や経済である。これ以上詳しく言及するとこの作品の品質を損ねる危険があるのでまずはこのあたりで止めておく。

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狼と香辛料』に明確なストーリーラインは存在しない。初めの話で私達にもたらされるのは綺麗な背景と、少しの伏線らしき謎である。その後ストーリーはいくつかの章に分けられて、様々なテーマが描かれる。私はその殆どをただただ楽しんだ。このストーリーの不完全さを1つ挙げるならば、時々それが必要以上に複雑になってしまうことだろう。取引の騒動が連鎖して大きな騒動を巻き起こしたりと、経済というテーマに関心が無い人(私はそんな人を知らないが)は退屈に思ってしまう可能性はある。

しかしこの作品で描かれるリアルな中世の世界は、私の大好きな作品である"A Song of Ice and Fire*2"に匹敵するものであったことを明記しておく。

登場キャラクターは今まで出会った中でも最高の人物であった。Holo は正真正銘私が一番好きな女性キャラクターである。時には怠惰な印象も受けるが、そんなところにも萌えてしまう(私はこの言葉が嫌いだが、それでも使ってしまうほど彼女が魅力的であるのだ)。Lawrence も素晴らしいキャラクターだ。偏屈な一面もあるが、鋭い知性を持っている。彼の英語版の声は Okabe Rintarou と同じであり、Lawrence と Okabe は多くの共通点を持っている*3

狼と香辛料』が私のお気に入り作品である一番の理由は、登場人物が魅力的であるからだ。どれだけストーリーが複雑になったとしても、Holo と Lawrence の軽妙な掛け合いがいつも私達を癒してくれる。このキャラクターという要素においてこの作品には欠点は存在しない。

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狼と香辛料』の映像はそこまで豪奢ではないが、綺麗であることは確かである。巨大な金色の剣やドラゴンに影響されることなく、リアルな中世の世界が描かれている。第2期の映像はスタジオが変わったためやや異国的な印象になったが、それでも1期と同じような印象を受けた。音楽もまた美しく、特に実際に中世の楽器を用いて演奏されたオープニングソングについては本当に賞賛されるべきである。

そしてもう1つサウンド部門で言及したいことがある。それは吹き替えについてだ。そう、この『狼と香辛料』の吹き替えverは『CowBou Bebop』や『Steins;Gate』にも並びうる程に素晴らしかった。日本人の声質ではこの中世ヨーロッパの世界に生きるキャラクターを表現するのは難しく、その点この英語の吹き替え音声は完全に作品に調和していた。

( 参考:狼と香辛料1話の英語吹き替え )



このレビューではこれからこのアニメを見る人のために、ネタバレを防がなければならなかったのであまり深く分析は出来なかった。しかしこの作品が私にとって最もオススメできる作品の1つであるということを伝えたかったのだ。私は3期のアナウンスをいつまでも心待ちにしている。

以上。これが満足のいく概要であったことを願っている。


おまけ:このレビュアーさんが紹介していた海外のMAD動画


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*1:いわゆるビンタ跡でしょう

*2:米作家ジョージ・R・R・マーティン著。中世イギリスや薔薇戦争をモチーフにした架空戦記であり、多彩な登場人物の視点から進行する群像劇であり、ドラゴンや魔法が登場するファンタジー

*3:共通点… どこだろう…