なろう備忘録第34弾。
あらすじ:
五色の神と四大国によって繁栄するパルセルト大陸。数年ぶりの魔物の侵攻が噂される最中、冒険者を養成するルベリア学園で仲間を探す少年少女は風変わりな男に出会う。サムライを名乗る男は英雄たりえる力を持ちながら、魔力を失い落ちぶれたという。数奇な出会いは風を呼び、ここに大陸を揺るがす戦いの宿命が始まる。
前回に続いて、今回紹介するのも王道ファンタジー長編。転生無しの異世界ファンタジーではあるが、能力やらヒロインがやたら多かったりと、割となろう要素は多め。ただストーリーになろう系のテンプレ要素はほぼ皆無。しっかりした骨組みを持つ正当派なストーリーです。
ただ、個人的に若干引っかかったのがキャラクター。この作品は主人公が2人いる。様々なモノを犠牲に強さを得た侍:カイと、全てを守らんとする騎士:クルスだ。
クルスの方は良かった。彼の理念には共感できるし、守るべきもののために努力する、完璧な主人公だった。しかし一方でカイのほうにはあまり感情移入が出来なかった。壮絶な過去を持ち、人生に達観していて、まるで人間らしくない彼の考えは全く理解できないという程ではないが、あまり共感できるものではなかった。それに準じて、カイに惹かれていく二人のメインヒロイン達の姿も、なんとなく一歩引いたところから読んでしまった。
そんなこともあってかあまりキャラクターに感情移入は出来なかったけれども、ストーリーは文句無しに面白かったので最後まで楽しく読めた。外伝の『XX話:最後の神話』を読み終わった瞬間は、確かな充足感にしばし放心してしまった。良い作品でした。
以下個人的感想。ネタバレ注意。
ギルドではムードメーカー的な立ち位置にいるイリスだが、本人はそれを役割として認識している。
---1章7話「共闘以来」
普段は明るく振る舞ってるけど、実際は……みたいな二面性を持ってるキャラクターが大好きなので最初はイリスがすごく好きだった。彼女はクルスとくっつくといいいなあなんて思いながら読んでいたので、彼女がカイに惹かれていく過程はちょっとモヤモヤしてしまったり。
隣で甲斐甲斐しく衣服を畳んでいたシオンが顔を挙げて首を傾げるが、何でもないとばかりに頭を撫でる。
(中略)
笑い合う二人の姿は親娘にも兄妹にも、あるいは恋人にもみえる。ただ暖かく、微笑ましい。
---3章14話「夏のはじまり」
クルスとシオンのペアが本当に好きだった。なんというかこの二人が作品唯一の癒しでした。二人でのんびり釣りをするシーンも良かったし、ドワーフの子供たちにもみくちゃにされる二人もめちゃ萌えでした。願わくば彼らの行く末をもっともっと読みたいものです。外伝更新されないかなあ…。