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なにもかも破天荒な傑作 -『転生!異世界より愛をこめて』

※この記事には重大なネタバレが含まれます。ご注意を。


備忘録第6弾。

今回は『転生!異世界より愛をこめて』の感想を書いていきつつ、自分の趣味嗜好などを晒していこうと思います。はい、この作品、何から何まで私にツボだったんです。

最終章を除いて。
まあその辺のところに触れながら色々と雑記していきます。

この作品を見つけたきっかけはレビュー数の多さ。当時100位にも入っていなかったこの作品のレビュー数は総合3位であった。これはつまり万人受けはしないがハマる人はとことんハマる個性的な作品なのではなかろうかとの思いから手に取った次第である。そして結果この判断は正しかった。

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この作品のストーリーの枠組み自体はよくある異世界転生ものとほとんど同じ。異世界に転生した主人公が強いスキルを得て、かわいい女の子と世界を旅していく。しかし、なぜだか妙に面白い。物語の展開が破天荒なのである。これは100作品以上読んできた今の自分から見てもそう感じる。そこには明らかな個性があった。

そして、この主人公も破天荒なのだ。00年代のラノベ主人公特有の斜に構えた物言いをしたり、誰も知らないようなパロネタで一人盛り上がって周りをドン引かせたり、欲望の赴くままに隙あらばヒロインの胸を揉んだりと、まあこういうどうしようもないヤツなのだ。欲望に素直で、なおかつ実行にうつす直情系の主人公。

自分としてはなよなよした優柔不断な主人公より、こういう我が強い唯我独尊な主人公のほうが割と好感を持てたりするのだが「これはまあ人を選ぶ作品な訳だ」なんて納得せざるを得なかった。

そしてこの作品の核は何といっても『ダブルヒロインの造形』。ただただ自分にドンピシャだった。ダメ男属性持ちの銀髪ツンデレお姫様シャーラと、途中参加の青髪の純真少女ルル。この二人にとにかく萌え剥げた。この作者さんは「可愛い」というものを完全に掌握している。特に惚れ薬関連の話は本当にきた。

さて、この作品の1つの分岐点であり、感想欄が阿鼻叫喚に埋まった例のシーンについて。これには自分もかなりのショックを受けた。と同時に主人公の壊れっぷりにゾクゾクきたのも事実。この壊れ描写は素晴らしい。また、このへんのただ献身的に不安定な主人公を支えるシャーラが本当に良いんだ。
そして運命を変えるべく何度も繰り返し過去に戻る主人公。この話の落としどころがまた素晴らしい。ふり絞る台詞が胸にくるのだ。



そして最終章。

何か読んでる最中、常に違和感が付き纏う。展開が雑なのだ。とにかく色々突っ込んどけって適当に書いている印象を受けた。魔王サイドに寝返るシャーラの心中もよく分からんかったし、序盤からコツコツ描いてきた勇者の扱いも雑だし、ラインの懺悔も誰得だし(個人的にこれが一番許せなかった)、さすがにパロネタも多すぎた。

盛り上がるラスボス戦で気の抜けたパロネタ織り込むのもまあこの作品っぽいっといっちゃあそうなのだけど、拍子抜け感は否めない。記憶喪失とか地獄から復活するくだりも蛇足に感じた。ルルについては過去繰り返し編で綺麗に〆られてるのに。9章ラストで勇者と協力して魔剣と魔王相打ちENDとかで終わってたらなあ。

1-9章がなまじ最高だっただけに本当に惜しかった。切実に。

ただまあ、全体的に見たら掛け値なしに良い作品であった。是非読んでみてください。

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