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最高のバッドエンド -『極地恋愛』

※ネタバレありです


『極地恋愛』読み終わった。
いやーとんでもない作品でした。久々の徹夜小説になりました。
やばいほど面白かったです。『インスタント・メサイア』に似た中毒性でした。

なろう備忘録21弾にして初めてのノクターン小説になりましたが、そろそろこっちも開拓していこうかなと思っております。ブクマしたまま積んでる作品がたくさんあるんですよね。ノクタの小説こそ玉石混合の言葉が似あうと思う。エロ小説と侮るなかれ

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とにかく『何から何まですべてが計算されつくして書かれている』という印象を受けました。キャラクター造形、ストーリー展開。特に過去回想を挟むタイミングが絶妙だったように感じます。それぞれのキャラクターの裏の顔、はたまた真の顔が描かれるなど、それぞれのキャラクターの印象は一転二転しました。美奈やヒロトの本性のようなものは読んでいて薄々予想はつきましたが、まさか赤音があそこまで化けるとは思わなかった。

個人的に後半は赤音の独壇場でした。

俺の手を赤音は引き寄せて両手で握った。
立ち止まって、目を閉じて胸元に持っていく。
祈るような仕草だった。
こういう小さな幸せがあれば、あたしはやっていけるよ。手を繋いでくれるだけで幸せなんだ。だから、この手を離さないで欲しいな
―――17話『大匙一杯』より 

このへんからヒロイン逆転してきた感がある。今まで正論しか言ってこなかった美奈の言動もどこか危うくなってきて、赤音の純粋性というか、まともさのようなものが浮き彫りになってくる。

露出した左胸からこぼれ血の泡が沸いた。赤音はそれを見て、痛みを堪えるように目を縛った。
「ひとまず、傷の手当をしよう。体を持ち上げるから、少し痛むぞ」
「いいの。このまま手を握ってて…こんなの、夢みたいなことだから、実感がなくてさ…あたし、幸せになりたくて…今、凄く幸せ」

(中略)

「…ありがとう。なんだか、涙で目が見えないや…」
赤音は笑いかけて、そのまま開いていた目が閉じられた。 

この瞬間下剋上は成された(私の中で)。 元々ずたぼろだったサブヒロインがここまで化けるとは思いもしなかった。やはりこういうサブキャラクターの逆襲は燃えます。最後の最後の展開も含めて。それにしてもあの終わり方は最高だった。余韻が素晴らしい。

美奈も最初から最後まで良いキャラクターをしていたと思います。
幼い外観でありながら全てに達観していて男たちを手玉にとる様子は最高でした。ファーストキスを奪うシーンはこういう普段の態度とのギャップが素晴らしかった。



久々にこういうサバイバルものを読みましたが、やはり面白かった。読んでいて『グリザイアの果実』のエンジェリック・ハウル編なんかを思い出したり。絶望感ではグリザのほうが勝ってましたが、人の闇を描くという点では此方に軍配が上がっているように思える。その点ジョウとルナは良いキャラクターでした。

後半の美奈の独占欲が発露してきたあたりからはヨスガノソラの穹√なんかが浮かんできた。互いの体ばかりに関心を向けてしまい視野狭窄に陥り周りが見えなくなって、それは自覚できているのに2人だけの世界に溺れてしまう感じ。

ノクターンならではのエロ描写も自然にすっと入れられていて良かったです。ストーリーとエロの配分が9:1くらいの小説が個人的にベストだったり。最近はエロ一辺倒の作品ばかりがランキングを支配していて「う~む」といった感じです。そういう作品も好きなんですけどね。

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