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ロリ少女になった引きこもりの話 -『おんらいん こみゅにけーしょん』

今回はなろう備忘録です。海外レビュー翻訳に夢中になっていたので、こちらを書くのはかなり久々になりますね。

今回紹介するのは『おんらいん こみゅにけーしょん』という作品。TSモノ*1を読みたくなってローラーしてたら見つけた作品で、かなり真っ向からTSというジャンルを描いた良作でありました。しかもこの作品はTS要素に加えて『ロリ+恋愛』というかなり偏った要素を抱えているのですが、このようなニッチでマイナーなジャンルをここまで書き上げたことにも感嘆です。そしてイラスト付き...。

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さらに、引きこもりやいじめ、自殺未遂などの社会的問題についても克明に描かれており、主人公は辛い現実から目を背けるために、非現実的なVRMMOの世界に逃げ込むことになります。この作品の醍醐味は、とにかく主人公の内心描写にあると思う。TSモノとしての性への戸惑いは勿論のこと、彼(彼女)の周りの人物に対する気持ちの変化がとても良く描かれていたと感じる。このことについては後ほど詳しく述べようと思う。

では、なろう備忘録23弾をば。


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ではまず主人公について。彼は物語冒頭から女の子になるので、以下では彼女と呼称します。彼女はとある事件以来、学校へ行くことを止めて家に引きこもっている訳ですが、そんな彼女の性格が特に上手いこと描かれていたと思う。例えばゲーム内で彼女は支援職に就くことになるのですが、その理由が『誰かに必要とされたいから』と承認欲求全開でいかにもそれっぽい。その後も彼女は冒険の最中「自分は役に立っていないのではないか」とずーっと悩んでます。仲間達はそんな彼女を優しくフォローするのですが、しかしそれを素直に受け取れない彼女は「そのフォローの言葉に申し訳なくなる…」と凹んでしまう。

いやでも、その思考回路、めちゃくちゃ分かるんですよね他人の評価ばかり気にしてしまう彼女の気持ちはありありと理解できた。でも、他人が自分をどう見ているかを気にしているというのは、結局自分可愛さに行っていることなんですよね。しかしそんな彼女は、周りの人に諭されることで、自らの行いを改めることになる。このあたりの描写は個人的にとても良いと思った。

また、自身が女性に順応していくことへの戸惑いも良かったです。

男であったことを無意識で過去の事だと捉えてしまっているのだ。少しずつ心の中まで女の子へと変わって行く、それに順応していく事が怖くて怖くて仕方ない。 


ただ、物語において過度に主人公は優遇されていることには、やはり違和感を覚えてしまった。超レア装備を1回で手に入れてしまったり、ラスボスにとどめを刺すことになったりと、主人公を活躍させようとするあまり不自然になってしまった箇所はいくつかあった。また彼女は周りの女性から可愛い可愛いと、それはもうチヤホヤされるのだが、こういう要素もちょっと露骨すぎるかなと感じた。

また、彼女は周りの人たち(親友の男二人以外)に対しては結構厳しく接する。メインキャラクターに彼女を溺愛する女性がいまして、その子は性格は良いのだけど少し変態な言動をとることもあって所謂いじられキャラみたいになっていたのですが、結局彼女が最後まで報われることが無かったのはさすがに可哀そうだった。この作品、結構いじられキャラに対するあたりが強くて(主人公も無意識ながら結構えぐいことをする)そういうのが苦手な人は注意したほうがいいかもしれない。



ストーリーは約40万文字で綺麗に纏まっています。仮想現実のVRMMOの話だけでなく、実際に少女になってしまった現実の話もきちんと並行して描かれている。個人的には現実の話のほうが好きでした。特に両親の話は良かった。gdgdすることなくテンポよく進むので、一気に読んでしまうのがいいかも。

キャラクターについては割と記号的で、見たことあるような設定が多かったかなと感じる。あと悪役の思考回路がぶっとんでるというのも、なろう小説あるあるのような気がする。しかし主人公のキャラクターがかなり特質だったので、そこでカバーされているということはあるかもしれない。

総論。ニッチなジャンルの集合体のような作品をここまで真っ向から描き、纏め上げた作品というのは珍しいと思う。現実パートはシリアスで読み応えがあり、仮想現実パートでは様々な冒険をする可愛らしい主人公を見て癒される。一読の価値アリです。

おんらいん こみゅにけーしょん

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*1:性転換を扱うジャンル。この作品は男→女