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海外のベストレビューを翻訳する -『電波女と青春男』

各アニメの海外で最も支持されているレビューを翻訳する。
原文はコチラ。(MyAnimeListより)


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Jul 11, 2011
12 of 12 episodes seen
Overall Rating: 9
513 people found this review helpful

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当初レビューを書くつもりはなかったが『電波女と青春男』を楽しく見ていた一人として、多くを占める平均以下の評価を払拭する義務があると感じて筆を執った。

Art:
素晴らしい。私は作画にはうるさいほうだが、この点において『電波女と青春男』は間違いなく優れている。カラフルで、鮮やかで、生き生きしている映像。シャフトの色彩設計は本当に卓越していて、それは『秒速5センチメートル』の水準にさえ届きうる。

Soundtrack:
私はこの要素をあまり重要視しないので、普段は省いている。しかし、この作品のどこか憂鬱なピアノ曲などシーンに適合した雰囲気のBGMは特筆すべきものがあった。OP/EDについては言及を避けることにする。

Characters:
多くのレビュアーが述べているように、この作品のキャラクターは奇抜な人間ばかりである。よくあるキャラクターの焼き直しではなく、彼女らに新しいタイプの個性を与える手法は痛快の一言。特に主人公の自転車のカゴに座って空を目指す Erio Touwa が個人的に好きだった。また彼女らの成長はゆっくりであるが、確かに存在する。これは多くのレビュアーが十分に指摘していないことだ。

電波女と青春男』は思春期の男女の日常を描いた作品であるのだから、劇的な成長や、複雑なイベントは存在しないほうが好ましいと私は思う。この漸進的な変化は、私達の現実をそのまま反映させたものであり、ただ彼女らが自らの奇怪な行動を自覚するということだけでも、それは間違いなく有意義な成長であるのだ。

Story:
この物語は爆発的なスタートを切る。1-3話は個別でOVA作品にしてほしいほど良かった。どこか謎めいたプロローグに私の心は鷲掴みにされた。Erio の個性はこれでもかというほどに強調され、人生の意味を哲学的に深く探求していくストーリーも素晴らしい。主人公が Erio の妄想癖に対して拒絶するのは、彼が正当な幸福を求めることに起因している。彼の行動は自身の信念に基づいたもので、それは彼が正常な人間であることを明確にしている。

残念なことに、多くの視聴者はこの作品を"ただのハーレム作品"だと見なしているようだが、ここで私はそうでないことを強調したいと思う。この洞察はやや不安定であるが、いくらかの的は射ていると思う。

第8話*1を例に挙げてみる。この話は Meme の1週間の日常生活を軸に構成されているが、そのエピソードで得られる結論は鋭く、また深淵なものであり、彼女の根底にあるものを垣間見ることが出来た。この物語に無意味なストーリーは存在しない。

初めの1-3話に比べると、残りの4-12話で扱われたテーマがやや日常的であったことは確かである。この作品は視聴者の興味を留めようとするあまりプロットが浅くなっているという批判があるが、私はそこを批判するのは違うと思う。この日常的なストーリーは10代の男女の群像劇を扱うこの作品に良く調和している。

またキャラクターの会話はまるで深海魚のようにグルグル転回していくが、そこには僅かではあるが人生の教訓のようなものが巧みに吹き込まれている。注意を払ってこの作品を視聴すれば、人生経験に基づく啓発的な見識を得ることができるかもしれない。

独特なキャラクター、ゆっくりとした変化、興味深いストーリー、これらこそが『電波女と青春男』の魅力に他ならない。

複雑なプロットを望むのならば、この作品は敬遠することを勧める。しかし、もしあなたがライトで華々しい物語を望むというのなら、私は強くこの作品を薦めたい。また繰り返しになるが、『電波女と青春男』には僅かであるが哲学的なメッセージが込められていて、それはあなたに数奇で思慮深い見識を与えてくれることだろうと思う。


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*1:海で手作りロケットを打ち上げる話です