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狂気の魅力 -『ウロボロス・レコード ~円環のオーブニル~』

備忘録第14弾。

今回ご紹介するのは『ウロボロス・レコード ~円環のオーブニル~』だ。どこかの記事で熱心に推されていたので気になって覗いてみたところ、序盤で一気に魅了された。今まで読んだことない感じの話だったのでそれはもう思いっきりハマってしまった。こういう倒錯したダークな話も良いもんですね。

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この作品の魅力はなにより『倫理観とか善悪とかどうでもよくなるほどぶっ壊れてる主人公』。この作品は主人公トゥリウスがただただ不死を追い求め狂気に染まっていき、神に抗うため異世界で暗躍して仲間を集めていく物語だ。彼は欲しいものを手に入れるために極悪非道の限りを尽くす。

どこからどう見ても悪役な主人公に立ちはだかるのは、金で世界を動かす大貴族であったり正義を掲げた勇者達だったりする。そして彼は外道な方法で彼らを屈服させていくのだ。その様に恐ろしいほどの愉悦と背徳を感じてしまう。こういう普段あまり感じることのない気持ちを味わせてくれる作品というのは貴重であると私は思う。

紹介文の煽り文句がまた素晴らしい。

 たった一人の男の妄念が、数多の人生を変え、歪め、壊していく。それでもトゥリウスの歩みは止まらない。全ては、彼が焦がれる永遠へと辿り着く為に。


そしてこの物語のもうひとつの良さがトゥリウスに侍る奴隷たち。初めての奴隷であるユニを除いて、彼らは一様に主人に忠誠を誓うべく洗脳されている。と同時に個性的な人体改造も施されていて魅力的だったりする。正義から悪側に堕ちるキャラなんかもいたりして、その過程はもう筆舌に尽くしがたい。

個人的に好きなのがはじめての奴隷であるユニだ。精神も身体もぐちゃぐちゃにされた状態で捨てられていた彼女を見つけたトゥリウスは「実験材料にしよう」と彼女を持ち帰り、人体改造についての知識を総動員して彼女を長い時間をかけて修理した結果、彼女の身体を本来の状態に戻してしまう。

そうしてユニはトゥリウスに永遠の忠誠を誓うことになるのだが、物語の中盤で彼の元から離れ離れになってしまう展開がある。奴隷契約も解消されてしまう。そこでこれまでにないほどの執念で全力で彼女を取り返そうとする主人公が格好いいのだ。

そして無事彼女を取り返したトゥリウスとユニが奴隷契約を結びなおすシーンが本当に尊い。それはさながら結婚式のようであり。その描写がまた最高なんです。

身に纏うのはメイド服で、嵌めたのは首輪であるのに、その姿はさながら愛情と幸福とに酔い痴れる花嫁のようだ。
―――34話 しゃべり過ぎた父、笑わない娘<後篇>より


万人受けはしないけどハマる人にはとことんハマる作品だと思う。是非。