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海外のベストレビューを翻訳する -『ピンポン』

各アニメの海外で最も支持されているレビューを翻訳する。
原文はコチラ。(MyAnimeListより)


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Jun 19, 2014
Overall Rating: 9
445 people found this review helpful


これは並外れた作品だ。これほど感情を昂らせるスポーツ作品はそうそうない。

この作品は登場人物が大人に成長していく過程を美しく描いた物語であり、その手法も型破りなものである。しかしそれらの芸術的な価値を理解することは得てして難しい。この作品に誘起させられる感情は、単純な喜びや悲しみではなく、もっと複雑なものであるからである。

ストーリーは卓球をする二人の男子を主軸に据えたシンプルなものである。この物語の主人公は、Makoto Tsukimoto (通称 Smile) そして彼の親友 Yutaka Hoshino (通称 Peco) の二名だ。彼らは両極端な性格をしているが、二人同じく高校の卓球部に入っていた。彼らの物語は全11話で語られるが、それは決して短すぎることはなく、各エピソードは適切な情報量をもって視聴者に届けられ、全編通して綺麗に纏まっている。重要なイベントが各話にそれぞれ散りばめられており、どのエピソードも目を離す隙が無い。

ピンポン 感想


これは多数の視聴者が感じるだろうことだが、この作品の作画スタイルは少々奇妙であり、視聴を躊躇ってしまうことがある。大きくて色鮮やかな目は無く、描かれる線も荒くて不揃いなもので、ピンポン玉でさえ完璧な球を描いていない。この作画スタイルは業界において最も異端であるといっても過言では無いが、しかし決して悪いことではない。確かに少し不気味に思えるかもしれないが、その実この作品が描こうと思っているテーマに不思議とマッチしていて、何だか不可解な魅力が存在している。アニメーションはお世辞にも良いとは言えず、時にかなり乱雑になる。しかしその事をも魅力に昇華してしまうほどの力をこの作品は秘めている。


一方、この作品の音楽については手放しで絶賛することができる。練習中のシンプルな旋律のBGMから、アドレナリンを分泌させる強烈なOP曲まで、どこをとっても完璧だ。さらに、これらの音楽の使い方も優れていて、例えば登場人物の緊張を強調するために一瞬完全に静かになる時であったり、特定のキャラクターにそれぞれ用意されているテーマソングなども私達を熱くさせる。

この作品の最大の魅力は登場人物である。この短い時間の中で彼らの成長をこれほどまでに描いたことは驚嘆に値する。かなり意外なキャラクターにもその機会は与えられていて、そしてその成長は彼に救いを与えることになる。登場人物同士の交流もリアルであり、全ての会話は自然に描かれている。

ピンポン 感想


あまりここで登場人物について説明するのは憚られるが、キャラクター間にあるライバル関係は非常に巧く描かれている。彼らの性格や行いは、驚くほど現実的な様をもって彼ら自身に跳ね返ってくる。彼らを襲う過酷な現実は、表情だけではなく言葉にも表われていて、交わされる会話の多くは激しく、そして詩的なものである。


『ピンポン』は軽い物語ではない。これは良いストーリーを求める人にこそ薦めたい作品だ。あなたは卓球を好きになったり理解する必要は全く無い。この作品の核は彼らの「成長」にあるのだ。あなたが素直な心を持っているならば、きっと一生忘れることができないような瞬間を得ることができるだろう。



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