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好きな作品を発信していきたいブログ

宇宙人×ボーイミーツガール -『銀河の生きもの係』

なろう備忘録第38弾。

あらすじ: ある日突然、史緒の前に現れた転校生・高遠洸。顔良し、頭良し、スポーツ万能。でも、宇宙からの侵略者(自称)。ほとんど事件の起きない、けれどどこか不思議で不条理な日常の話。


「それがまさに、運命、というやつじゃないか」
-----第2話『運命の扉はスチール製』

 「だってさ、塚原さんは、僕の、召使みたいなもんだから」
史緒はその場にひっくり返りそうになった。
-----第11話『五年三組学級会の功罪』



27万文字完結。SF風味なボーイミーツガールもの。
SF風味といってもメインキャラの少年が宇宙人っていう設定以外にSF要素は殆ど無いです。

トーリーはTHE・少女漫画って感じの王道。テンプレって意味では無く、誰でも楽しめるという意味での王道です。小→中→高とダレることなくテンポ良く進んでいくので心地良い。文章も読みやすかった。

割と登場人物は多いですが、あくまで焦点は二人にあてられている。その価値観が違いすぎる二人が、ぎゃーぎゃーと喧嘩しながらも少しずつ距離を縮めていく過程が良いです。やれやれ系の女主人公が気づかぬうちに彼に絆されていくのが最高でした。

多作な作家さんなので他の作品も読んでみよう。

 銀河の生きもの係
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物語を破壊する個性 -『猫とワルツを』

なろう備忘録第37弾。

あらすじ:エミーリア騎士団で新しく発足することになった第12旅団。傭兵上がりの副長さんが、上官のボクっ娘にツンデられたりヤンデられたりしながらも必死で部隊を運営する面白くも、涙なしでは語れないお話。

 
強すぎる愛は、治らぬ病に似ている。
本来は健やかであるべきはずのものが、かえってそれを危険なものにしてしまう。
-----第5話『猫目石


死に行く故郷が焼け落ちる様に安堵を覚えた自分が、この愛を成就させるのは、地獄よりほかにありえない。
-----第10話『猫が嗤うとき』



23万文字完結。コンパクトに纏まった異色の異世界ファンタジー。
個性が強すぎる4人のヤンデレヒロインを抱えながら、ハーレムに頼らずにストーリーを畳み切った手腕に感服。目が死んでる状態がデフォみたいな主人公も好きだった。

個人的推しヒロインは エルザ≧アキラ≧エル>>>ジーク って感じです。

作者さん曰く。

ヤンデレはストーリーを破壊する個性だと思っています。
その個性にどんなストーリーを乗せるか。
弱いストーリーだとキャラが死に、ヤンデレが暴走するとストーリーが無茶苦茶になります。


最近は『黒の魔王』やら『氷の滅幕』やらヤンデレものばっか読んでる気がしますが、やっぱりこのへんのバランスをとるのは難しいんだろうなあと改めて思います。

良い作品でした。
 

 猫とワルツを
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殺戮に彩られた百合の花 -『氷の滅慕』

なろう備忘録第36弾。

あらすじ:
少女は血にまみれ、凶刃を振るい、命を搾取する。愛する人のために強さを求めた彼女は、人の域を越えた力を身につけ、精神の惨状へと踏み込んでしまう。


自分でも制御できない程の愛で狂ってしまった少女。
最愛の人を奪われた少女は、絶望し、泣き叫び、そして復讐を誓った。

少女は力を得るために血を啜った。
肉を食むたびに心は病んだ。
命を摘むたびに人から外れていった。

これは、常識、倫理、道徳観を失い、愛欲のみが残ってしまった少女の物語。



こんばんは。ここ1週間はもうずっとこの作品を読み耽ってました。
5章まで読み終えたところでこの記事を書いているのですが、なんというかもう衝撃の展開すぎてほぼ茫然自失の体になっている。ネタバレになるので詳しく書けないのが残念ですが、とにかくとんでもない作品に出会ってしまったという感じです。

作者さん曰くこの作品のテーマの1つは『狂気』であるらしいが、その描写力が本当に凄かった。一見普通のように見えるが、実際には致命的に思考回路がおかしくなっている狂人の描き方が卓越している。少しずつ、徐々に徐々に、その狂気が周囲に伝染していく様も良い感じに薄気味悪くてもう最高でした。

またこの作品のもう一つの特徴が、ガールズラブ要素が多分に含まれているところ。露骨な描写は少ないのですが、それでもかなり踏み込んで描かれるので、ここは結構人を選ぶかもしれません。メインキャラの一人が夜のテクニックで周囲の女性を落としまくって百合ハーレム築いたりしちゃいますからね…。

あと特筆すべきところは、少女の周囲の人物がとにかく報われないところだろうか。盲愛にとりつかれた少女は一貫してただ一人の女性しか眼中になく、頭もおかしくなってるので、彼女の仲間達はその狂気に引きずられて道を踏み外していく。正直彼らがこの先幸せになる未来が見えない。しかしこのままバッドエンドでも良いのではと思ってしまうほど『悲劇』としてのストーリー展開は申し分ない。

舞台設定もまた魅力的。『一二国記』を彷彿とさせる、16人の魔王が各地に君臨している世界。親交を深めたり、諍いあったりしている彼らの群像劇が読んでいてとにかく面白い。思わず親しみを覚えてしまうような交流をしているかと思えば、人間の領地に踏み入り魔王一人で数万を越える圧倒的な殺戮を行ったりする。

この物語に登場する派閥は神族・魔族・人間の3つ。各々が自らの正義を持っており、信念に従って行動しているので人間族が魔族に蹂躙されても特に胸糞悪くなることもなかった。というか魔王陣の方が人間側に比べて割かしまともなので、魔族側で物語を読んでしまう人も多いのではなかろうか。私もそうだった。

とまあこんな感じの小説です。ネタバレ気を付けて書いたのでよく分からないとこもあるかもですが、少しでも気になったら是非読んでみてほしいです。紛うことなき傑作なので。

氷の滅慕 - 小説家になろう


以下、ネタバレありの備忘録兼、雑感。
好きなシーンを抜粋しつつ感想やら書いていきます。


 

――子供はうっとうしい


それが何故……こうなった?
今の白蓮は、こちらを見上げて来るアルフラの、潤んだ瞳にたじろいでいる。今にもこぼれ落ちそうな涙に、心が痛む。

――私は弱くなった

<氷の滅慕 - アルフラ攻略 そして瞬殺>


なんとなく拾っただけのアルフラとの交流によって次第に絆されていく白蓮さん。得てして溶けかけの氷は脆くなるもので。

近い未来に離れ離れになってしまうことを伝えなければならないのに彼女を慮って言い出せなかったり、涙目のアルフラに庇護欲をくすぐられていつもより多く血をあげちゃう白蓮さん可愛いんじゃ…。

1章終盤の行くところまで行ってしまった彼女らの関係性も堪らん。互いに相手しか見えていない視野狭窄に陥って、どろどろに依存しあう感じ。百合と共依存の親和性。

 

 

人の温もりを知り、溺れそうな程の愛情を注がれた白蓮の心は、ふたたび凍りつく事を拒み、無くした物を取り戻そうと足掻いていた。

<氷の滅慕 - さらなる進化>


アルフラと引き離された淋しさを紛らわすために、周りの少女や、果てには女魔王にまで手を出し始める白蓮さん。その美貌と房中術で女たちを手籠めにしていくの最高です。

灰塚もウルスラも魅月も傾国ちゃんも好きすぎる。時折はいる白蓮ハーレムの日常こぼれ話みたいなのがすごい好きだった。ノクタに灰塚×傾国ちゃんがきゃんきゃんする話が載ってるんですが(最高でした)、他の組み合わせも是非読んでみたい……。

みるふぃーゆ騒動は滅茶苦茶笑った。傾国ちゃん本当良いキャラしてます。

 

 

 「あぁ……白蓮、やっと会えたね」

還元されない愛情。抑圧された想念。――無意識領域下の強い思慕は攻性に転じる。

<氷の滅慕 - オウマガトキマゾクノチニクルフアルフラ>


個人的に好きな一文。アルフラの異常性のようなものが浮き彫りになっていて妙に心に残った。「強い思慕が攻性に転じる」のインパクトが凄い。

5章の白蓮とアルフラの再会シーンは色々と惹きこまれた。感情が暴発し二人の周りのあらゆるものを凍り付くし、たった二人だけの世界で。言葉を交わすほどにどうしようもなくすれ違っていく様が、怪物に成れ果てたアルフラの慟哭が、あまりにも辛くて、それでいてゾクゾクする。

 

 

 「あたしは怖いよ、アルフラちゃん。――あたしは、死ぬのが怖い。アルフラちゃんが死んじまうのが、怖いよ……」

シグナムの視線の先では、地に爪を立て、ようやく体を起こしたアルフラが、暗い眼差まなざしで彼女を見返していた。

「……そんなことより……あたしは白蓮と会えないことのほうが、ずっとつらい……」

<氷の滅慕 - 強く儚いもの>


シグナムの必至な言葉を「そんなことより」と一蹴するアルフラが好き。ここで心が折れてシグナムの手を取るアルフラなんか見たくない。結局アルフラは始終白蓮しか見ていなくて、周りの仲間たちとの間には埋められないほどの溝が出来ていた訳で。これまで彼らが体を張って、信念を押し曲げてまでアルフラに捧げた献身は、まったくもって微塵も彼女に届いていなかった。それが如実に現れたシーンだと思います。シグナムさんマジ報われない……。

この後のアルフラとフレインが抱擁するシーンも、どうしようもないほどに歪んでいて、最高に素晴らしかった。個人的にはこの回が一番好きな話かもしれない。

 

 

通常の感性を持つ者が踏み込めば、嘔吐しかねないほどの嫌悪を催すその部屋で、アルフラは黙々と食事を貪むさぼる。人はそれを鬼畜の所業だと非難するだろう。

おのれの欲望のために人を殺し、あまつさえその血を啜っているのだ。確かに唾棄だきすべき行いである。しかしそれは、人間の倫理や良識といったものに照らし合わせた場合だ。それらは円滑な社会を形成するために人が作り上げたものであって、真理ではない。

みずからの糧として他者を補食し、生き抜く。それは個の生物として正しい。生命のあるべき姿と言えよう。

人の世の善悪を越えたところに、アルフラは立っている。

<氷の滅慕 - 善悪の彼岸 アルフラの最善>

 
落ちるところまで落ちてしまったアルフラ。なんというかもう、ただただ圧倒される。




とりあえずこのへんで。また追記するかもしれない。

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優しさと原風景 -『きみは小さな居候』

なろう備忘録第35弾。

あらすじ:
久し振りに訪れた父方の田舎。そこで、座敷わらしを目撃してしまった主人公。ちょっと世話を焼いたら、見た目、小学校低学年女児な座敷わらしに妙に懐かれてしまい…。

 
大学生の男と座敷わらしの、ほのぼの日常モノ。
読む前は彼らののんびりな日常風景を描くだけの作品かと思っていたが、実際に読んでみると作中のヒューマンドラマな要素が存外しっかりしていて、とても惹きこまれた。もちろんゆる~い日常風景もたくさん描かれていて、彼らのほんの何気ない会話にも癒されました。

それまで真理は、東京の街なかに自然なんかないと思っていた。
街路樹の根本に咲く、タンポポの花に目を留めることなど、今までなかったのだ。
わらしが「春が来たね」と笑って、真理は初めて春を実感したのだ。
< わらしとカッパと夏の空 1話 >

個人的に一番ぐっときたのがここ。何か……上手く言えないけども、とても良いのだ。
この作品の魅力が如実に現れた一文だと思います。


改めて良い作品でした。コメント欄で薦めてくれた方に感謝。

きみは小さな居候
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【小説家になろう】面白そうな作品メモ まとめ [56作品]

8/30:他記事で紹介済みの作品を削除。並びに新たな作品を追加。

こんばんは。
なろうの積読が結構な量になってきたので公開しようと思います。

殆ど未読なので簡易的な紹介になりますが、何らかの参考になれば幸いです。
そしてコメント欄でオススメ作品を紹介してくれた皆様方に感謝を。

 

完結済

  タイトル 文字数
1 平和の守護者 3,254,383
現代ファンタジー。能力バトルもの。空を飛びたいと願う少年の成長譚。レビュー数が多い作品は傑作の法則。
2 灰と王国 974,546
なろう要素なしの本格的ファンタジー。割とダーク寄りっぽい。
3 ノームの終わりなき洞穴 754,523
錬金術師と精霊がダンジョン運営。硬派な感じ。
4 魔法少女を助けたい 540,884
現代社会が舞台の魔法少女モノ。主人公は普通の大学生。
5 バグ技と安定チャートでいく、フリーシナリオ異世界攻略! 751,455
さらっと読んでみた感じ割と良質なハーレムもの。攻略本片手にゲームの世界に入ったようなものなので、全てが主人公の思いのままになってて「ん?」ってなるかも。
6 本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 5,682,766
絶対面白いのは分かってるんだけど、如何せん文字数が多くて中々読み始める気にならない作品。長期休暇中にでもじっくり読みたいやつです。
7 破戒眼のユーリ ~最強師弟の不思議な関係~ 463,453
TS少女と師匠のほのぼのライフ。年の差カップル。
8 カルマの塔 1,728,270
復讐モノが軸の架空戦記。これはおそらく読み始めたら止まらないヤツ。
9 没落貴族令嬢の異国間結婚奮闘実録 300,620
異文化間の恋愛コメディ。 ほのぼの系っぽい。
10  投擲士と探検技工士は洞窟を潜る 386,373
傭兵+技工士+エルフの少女。目指すは洞窟の最奥。
11 勇者様のお師匠様 963,814
落ちこぼれ主人公がお師匠様でヒロインが勇者様。ボーイミーツガール。
12 マタギの孫をなめんなよ! ~魔獣を狩る者たち~ 781,102
未開の部族に転生。閉鎖的な場所から始まる系の話は世界観が拡張していく過程が好き。
13 空中散歩 342,392
ミステリ風味な現代恋愛モノ。女主人公。唯一の家族だった兄が失踪。半年後、彼女の元に兄の友人を名乗る人物が現れた。この作者さんの恋愛モノほんと良いです。
14 転送先は死刑台 491,995
「ちょっと待て、死刑執行まであと3秒?! 俺に一体どうしろと?!」
15 辺境の老騎士 1,116,233
長期休暇中にでもじっくり読みたいやつ筆頭。年老いた騎士の気ままな一人旅。
16 使えない祝福とぼっちな俺 150,900
「菌」というサブテーマに惹かれた。ぼっちで異世界サバイバル。
17 私は戦うダンジョンマスター 646,629
最狂女子校生がダンジョン運営。侵略してくる異世界人を慈悲も容赦もなく殺し切る。
18 冒険者になったことは正解なのか? 449,249
青春 / 冒険 / ファンタジー
19 IMMORTAL BLOOD 1,179,468
異世界転移 / 異能力バトル
20 サムヒア・ノーヒア 94,681
現代 / 青春
21 依存的彼女 266,908
現代 / 恋愛
22 静かの海 283,107
年の差 / 悲恋 / 青春
23 中間管理職のおっさん、一万八千年後の未来へ。 221,251 
ローファンタジー / ディストピア
24 異世界で魔王になる方法 332,583
登場人物が酷い目に合う / 成長 / ダークファンタジー
25 ノーリグレット! 1,820,519 
異世界転生 / ロック
26 やり直してもサッカー小僧 968,134 
スポーツ / 現代 / 成長 
27 「「神と呼ばれ、魔王と呼ばれても」」 272,664
未来SF / 超越者 / シムワールド 
28 麗人賢者の薬草箱 602,176
調合 / 錬金術 / 恋愛
29 神様の定食屋 241,682 
現代 / ほっこり(自称)/ 料理 
30 無欲の聖女(旧題:無欲の聖女は金にときめく) 918,912 
 TS / 悪役令嬢 / 入れ替わり
31 英雄《しゅやく》になれない槍使い 514,525 
オリジナル戦記 / 青春 / ヒーロー 
32    
 
33    
 
34    
 

 


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連載中

 
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22 オタな俺とオタク少女 921,636 
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随時更新。

 

守るべきもの -『刃金の翼』

なろう備忘録第34弾。

あらすじ: 
五色の神と四大国によって繁栄するパルセルト大陸。数年ぶりの魔物の侵攻が噂される最中、冒険者を養成するルベリア学園で仲間を探す少年少女は風変わりな男に出会う。サムライを名乗る男は英雄たりえる力を持ちながら、魔力を失い落ちぶれたという。数奇な出会いは風を呼び、ここに大陸を揺るがす戦いの宿命が始まる。


前回に続いて、今回紹介するのも王道ファンタジー長編。転生無しの異世界ファンタジーではあるが、能力やらヒロインがやたら多かったりと、割となろう要素は多め。ただストーリーになろう系のテンプレ要素はほぼ皆無。しっかりした骨組みを持つ正当派なストーリーです。

ただ、個人的に若干引っかかったのがキャラクター。この作品は主人公が2人いる。様々なモノを犠牲に強さを得た侍:カイと、全てを守らんとする騎士:クルスだ。

クルスの方は良かった。彼の理念には共感できるし、守るべきもののために努力する、完璧な主人公だった。しかし一方でカイのほうにはあまり感情移入が出来なかった。壮絶な過去を持ち、人生に達観していて、まるで人間らしくない彼の考えは全く理解できないという程ではないが、あまり共感できるものではなかった。それに準じて、カイに惹かれていく二人のメインヒロイン達の姿も、なんとなく一歩引いたところから読んでしまった。

そんなこともあってかあまりキャラクターに感情移入は出来なかったけれども、ストーリーは文句無しに面白かったので最後まで楽しく読めた。外伝の『XX話:最後の神話』を読み終わった瞬間は、確かな充足感にしばし放心してしまった。良い作品でした。




以下個人的感想。ネタバレ注意。

ギルドではムードメーカー的な立ち位置にいるイリスだが、本人はそれを役割として認識している。
---1章7話「共闘以来」

普段は明るく振る舞ってるけど、実際は……みたいな二面性を持ってるキャラクターが大好きなので最初はイリスがすごく好きだった。彼女はクルスとくっつくといいいなあなんて思いながら読んでいたので、彼女がカイに惹かれていく過程はちょっとモヤモヤしてしまったり。

隣で甲斐甲斐しく衣服を畳んでいたシオンが顔を挙げて首を傾げるが、何でもないとばかりに頭を撫でる。
(中略)
笑い合う二人の姿は親娘にも兄妹にも、あるいは恋人にもみえる。ただ暖かく、微笑ましい。
---3章14話「夏のはじまり」

クルスとシオンのペアが本当に好きだった。なんというかこの二人が作品唯一の癒しでした。二人でのんびり釣りをするシーンも良かったし、ドワーフの子供たちにもみくちゃにされる二人もめちゃ萌えでした。願わくば彼らの行く末をもっともっと読みたいものです。外伝更新されないかなあ…。

 

 刃金の翼
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そして少年は少女の騎士となる -『Rotted-S』

なろう備忘録第33弾。

あらすじ:
人には見えないものが見える異能を持った少年アージェは、ある晩村で起きた事件を切っ掛けに、忌まわしい思い出が残る森へと踏み入ることになる。そこから始まる彼自身の変遷は、一人の美しい少女と、また大陸に残る神話と、深く繋がっていた。主人公の少年期から青年期までを描く成長記。そして大陸を彩る戦乱と、神代の清算を記す物語。

 
なろうでは珍しい、転生無しの純正ファンタジー作品。卓越した文章力、作りこまれた舞台設定など、海外のジュブナイル小説を読んでいるような気持ちになった。

なろう系テンプレな享楽的な作品に耽るのも良いですが、時折こういう純粋で王道な長編ファンタジー作品をがっつり読みたくなる時があるんですよね。『ハリー・ポッター』『ダレン・シャン』『はてしない物語』などをワクワクしながら読んでいたあの頃の感覚を無意識に求めているのかもしれない。

その点この『Rotted-S』は本当に素晴らしかった。一人の少女のために騎士になる少年。半人前な少年が様々な経験を通して世界を知り、時には大人に諭されながらも、一歩ずつ成長していく過程。徐々に明らかにされていく神話時代の歪。私がずっと「こういう王道ファンタジー作品が読みたい」と思ってきた理想の作品が、ここにあった。

今回も色々となんやかんや雑記していこうと思います。※ネタバレ注意。


◆ 1. アージェ+レア

少年期のアージェについては、壮絶な過去によりある程度達観してはいるものの、やはり行動や言動にどこか幼さが感じられてあまり感情移入は出来なかった。小説を読むときは物語に没入して主人公の視点で追体験してしまいがちな人間なので、少年期の彼には割とモヤモヤさせられました。ただ嫌悪感みたいなのは無かった。等身大で良い主人公だと思います。

で、そのモヤモヤが顕著に現われたのが、彼が「俺はレアリアの騎士にはならない」と頑なにこだわり続けたところ。過去の経験から忌避感があるのは理解できたけど、でもやはりどこかピースが合わないような違和感は拭えなかった。

まるで並行する線の上を共に歩いていたような数ヶ月間。微温湯のような時は、彼女の目的が「騎士を探すこと」にあったのだと気づいた時に終わった。アージェは、自分が彼女にとって純粋な意味で友人ではなかったことを知ったのだ。
---Act3『石鏡 004』 


このへんは本当にもどかしかった。レアリアの本当の内心を知っている分、特に。なんでそうなっちゃうんだ…と半ば諦めながら嘆いた。でもこういうすれ違いや勘違いは物語において(ジュブナイルなら特に)必要なものだとも改めて思う。この辺のストーリーは特に強く惹きこまれて、時間を忘れて読み耽ってしまった。

なんというか上手く言葉にできないんですが、こういう読者にモヤモヤした感情(若干のストレス)を与えるのは結構重要なことだと思うんです。最近のなろう小説は何かと読者にストレスを与えると思われるものを排除しがちだけど、そういう小説はどこか物足りなくて刺激に乏しい気がする。しかしまあ難しいことだとも思います。

恋愛要素を例に挙げてみると、メインヒロインと主人公を容易にくっつけないようにするとか。やはりじれったいモヤモヤは感じるのですが、満足を求めて続きを読みたいと思い、それは読者を作品に惹きつける一要素となる訳で。というか数年前のライトノベルは殆んどこんな感じだったような気がします。いつの間にやら界隈はチョロインだらけになってしまいましたが。

閑話休題

物語は進み、主人公はレアリアの過去を知り、彼女がおかれている状況、彼女が実際にどういう扱いを受けているのかを知って、自分の思いに葛藤して気持ちが揺らぎ始める訳ですが、しかし過去の苦い思い出から「騎士」という存在に嫌悪感を抱く彼は結論を出せずにいた。

ここでの主人公に対するエヴェンの言葉が刺さるのだ。

「そうかもな。俺のこれは、多分甘えだ。俺は恵まれて育ってるからな。ただな、お前のそれも甘えなんだよ。一を見て十が嫌だと駄々をこねてる。自分は違うものになろうと何故思わない? 少なくとも、陛下が今、窮屈な思いをなさってるのはお前が甘えたガキでいるせいだ」
---Act3『二と一 001』

私の言いたいことをそのまま代弁してくれたように感じる。こういう風に主人公の背中を押してくれるキャラクターがいる作品が好きです。 

そして主人公は少女の本心を知り、彼女の騎士となるのですが不遇期間が長かったのもありその感動はひとしおだった。ストーリーの6割を費やして、満を持してのこの展開。やっと綺麗にピースがはまったような気持ち良い爽快感を味わいました。ここでのレアリアの反応がまた良くて。

レアリアはただ今だけは、声を上げて泣きたいと思った。
---Act3『二と一 004』

この泣きたくてたまらないのに我慢してそれに耐えるところに、彼女の女皇としての強さが垣間見えて、とても良かった。ここのアージェとレアリアの問答はもう何回も読み直した。不遇っ子が報われるシーンは良いものです。

その後の2人の関係性がまた素晴らしい。女皇と騎士という、対等な立場というと語弊があるかもしれませんが、守る守られるの一方的な擁護ではなく、共に助け合い支え合う関係性といいますか。その間にあるのが恋愛感情じゃなくて親愛感情なのも良い。

またそれがポーズだとしても、ヒロインに仕える主人公という構図が思ったより良かった。なんというかアージェがレアに敬語で話すのが、これまでのギャップも相まってめちゃくちゃ萌え転げた。至る所で主人を大切にしている想いが見られて、この辺りからの主人公はもう本当に格好良くてとても好きです。

本編はシリアス一辺倒でしたが、幕間や後日談の彼らの甘々なバカップルな感じもとても癒された。レアリアが他の男に頭を撫でられているところを見て、思いっきり嫉妬しているアージェがなんというか人間らしくて微笑ましかった。

そして後日談最後のエピソードである『幸 (100題4・1996年)』が本当に、素晴らしかった。死期を悟ったレアリアがアージェと共に歩んできた人生を顧みて、彼に感謝を告げる場面。涙が止まらなかった。彼らの軌跡を思い、自分でも引くくらいに泣いてしまった。「ああ、自分はこんなにも彼らのことが好きだったのだな」と改めて実感したように思う。本当に良かった。


◆ 2. ミルザ

「兄はディアドだ。もし迷ったらそれを思い出せ。ディアドは他の騎士とは違う。ただ一人の為の戦士だ。―――― 他を捨てようともその御手だけを掴めればいい
---Act5『天高く謳う 002』


何気に彼女が作中で一番好きなキャラクターかもしれない。初登場時はなんだか元気な子だなあくらいの印象しか抱かなかったのですが、アージェが騎士になった後の「兄!」と何かと世話を焼こうとする彼女がかわいくて(この呼び方とても好き)、だんだんと好きになっていった。態度のでかさの割に小柄で華奢なのも萌えます。

だからこそあの最期はかなり胸に来た。薄々彼女は退場する側の人間なんだろうなとは思っていましたが、それでもやはり辛かった。

欲しいと切望した時間が得られた。
それは彼女が想起した後悔を拭う為の時間で、けれど無事、目的を果たすことが出来た。兄を助け、優しくしたかったのだ。それは他者から見れば大して変化のないことなのだろうが、彼女にとっては精一杯だった。
---Act5『天高く謳う 002』

今際の際に彼女が零したこの独白が、もう本当に切なくて、心に刺さる。最後に交わした兄との会話が、彼女にとって少しでも救いになっていたことを望みます。




以上、個人的感想垂れ流しでした。
改めて、本当に良い作品でした。掛け値無しに、なろうファンタジーの中でも最高峰の作品だと思います。

ああ、この作品に出会えて良かった。

 Rotted-S
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